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ほとんど一年ぶりに、病棟の屋上へ出てみた。
去年の今頃は何してたっけ・・・ そうだ、双子と桜華ちゃんと、みんなで七夕したんだ・・・。 楽しかったなあ。 ぼんやり夕焼けを眺めていたら、ちょっぴり寂しくなったの。 会えなくなった人たちの、なんて多いこと。 「なづっちゃーんっ、見てみてっ、しゅんが手乗り地蔵のクッキー焼いてくれたのーーっ」 扉の所で桜華ちゃんが叫ぶ。 ・・・ふふふ、人がセンチになってるときに。 あのこはもう。 「はいはい、あたしの分も残しといてねーっ」 でっかい声で叫んで、さて、仕事に戻りましょか。 どうしようもないことが起きるなら、 今一緒にいられるこの子達との時間を精一杯大事にしよう。 看護士が言うのもアレかもしれないけど、 もうすぐ遠くに行っちゃう桜華ちゃんへ。 ずっとここにいて、みんなと笑っててね。 PR
来ちゃった、てへ。
じゃないわよ冬也!あんたそんなキャラじゃないでしょっっ!!笑 て、小さーく叫んだ夜7時。 面会時間はとっくに過ぎてるのに、まーたふらふら抜け出してた桜華ちゃんと居るのを捕獲。 いいぢゃん今日ぐらい♪ その声は…と恐る恐る振り返ったところには双子‘S。 やっと見つけたって冬也に寄ってく夏彦。 桜華ちゃんが薄暗くて冬也くん迷ってたんだって。て言うけど、あなたも病室にいなきゃいけないはずなのヨ。 確かに久しぶりに4人揃ったわねぇ。 ふむ。。。よし。 みんな屋上にれっつごー。 お腹に響く低い音と、夕陽みたいに照らされる隣にいる顔。 ほけっと口開けっ放しな4兄弟とオダンゴ頭な桜華ちゃん。 相羽兄弟、家族以外と見るの初めてなんですって。 アラ、お邪魔しちゃった?って聞いたら夏彦に、 アキさんとなら光栄デスなんて言われちゃった。 まぁ生みの親だしね(笑) ふふふって笑いながら、見れてよかったなぁ。 って当たり前の感想が少し違って思えた。 大好きなみんなと過ごす、花火大会の夜。
一日旅をしたおかげで気持ちは満腹。
思わず口元緩ませて仕事してたら、劉斗に白い目されたわ。あの子相変わらず生意気でムカツクわ。←愛。 引き続きぽうっと問診中。 ・・・おかしいの。 さっきまでは桜華ちゃんと喋ってたはずなのに、いなくなっちゃったの。 おかしいわ。 目の前に居たはずなのに。 そういえば、お~いってヒラヒラと手を振られた気もするし・・・集中力も途切れ途切れだったし・・・ ・・・・え?笑 ふむん。ま、いっか。 じめっとする梅雨が明けて入道雲が爽やかサンサン。 カーテンを押して涼しい風も吹いてるし。って伸びーってしてたら、ベッドサイドからひらりとメモ書きが。 ガラスの葉の唄は、じんわり聴こえた。 思い出さないのは忘れないからだけど、どれでもどこかにぽろぽろと零してしまうかもしれなくて、 その水滴を掬ってもらったような心地。 「―――・・・」 ステキな唄。 さて。 そんなステキな桜華ちゃんを捕まえてベッドに縫い付けなくちゃ。 あの子熱あったんだからもうっ!
そっとドアから覗いてみたら、すぐに気づいた桜華ちゃんがひらひらと手を振ってくれた。
ぅにゃ・・・ごめんねぇっ! ぴぎゃーっと抱きつく!!ごめんねっごめんねっ、ハイ今日の差し入れの金平糖!! そんな、嫌そうな顔しないでよぉもう。 今日からはまたちゃんと検診来たげるからさって、でっかいはーとマークつけて言ってやった。 ふふふー、そんな顔したって嬉しいのバレバレなんだからぁv とかじゃれてたら、ドン引きした双子がドアから後ずさろうとしたのを発見。 逃がすわけないじゃなーい☆ 最近気づいたんだけど、この子たち。 桜華ちゃんが好きでこの病院通ってるのね、前は夏冬’sの云々で来てたくせに。 って、4人ベッドに並んでお喋りしてるときにつっこんでみたら、なんとびっくり。 おーちゃんと遊ぶの楽しいんだもん。 だってさ。 アラアラ。いい変化かしら。お母さんは嬉しいわv なんかね、 ぐるぐる考えて時々泣いて空元気バレバレで笑ったりとか、偶に冷静に観察分析したりとか、 すぐ横で見てるのがおもしろいんですって。 笑いものっていう意味じゃなくてね、そういう人間らしいというか、自分の中の整理の付け方表への出し方が興味深いって。 ・・・・。 賢い事言ってるこの子たち、ちょっとイヤだわ。笑 そんなこんなで。 今度からおやつは4人分用意しようと思いながら、いつもどおりの帰り道をいとしく感じたのでした。
しばらく顔見せなくてごめんねーー!ほら久々、お土産の手乗り地蔵だよー!
なんて言いながらいつものように病室のドアを開いて、いつものように規則破りのおやつを頬張るあの子がいて。 笑顔で迎えてくれるはずだったんだ。 「―――ー」 空のベッドと畳まれた白い布団。 風を吸い込む開け放たれた窓と揺れるカーテン。 キュと、足が扉口で止まった。無人の部屋はひんやりとして、来るはずの無い来訪者を拒絶する。 笑みを作ろうと不自然に引きつった口角が元の位置に戻らないのを感じながら、無理矢理に結んで笑みを消した。 作るものじゃないや。脈絡のない哲学を頭に浮かべる傍らで、フル回転もさせる。 腕に抱えたお土産をよけ、確認した問診表の最後の日付から、今日までを数えてみた。 間抜けな包装紙を笑ってくれる人はもういなくて、左手の力を抜くと同時にカラカラと鳴る音がやけに遠く聞こえた。 「…そ、か」 うん、元気になったなら、良かった。 『楽しいこととか、嬉しいこととか、全部ぜんぶ変わらずにはおれんけどさー』 『次の楽しいこととか嬉しいことを待ってればいいんだよ』 『そしたらなづっちゃん、ずっとニコニコしてるっしょー』 だから、寂しいなんて言っちゃだめだよ、お医者さん。 いつだったか、あの子はそうやって言って、にへって笑ったんだ。 いつのまにか閉まっていたドアを後ろ手のまま引く。 自分の影と病棟の外の木陰が、夕日で細く映し出される。 脳がその場に置き去りにされる感覚。 どんっと背中にぶつかったのは、いくつかの衝撃と体温だった。 「おかえりなづっちゃーん!!」 「「おかえりおかあさーんっ!!」」 茶色い猫ッ毛頭が二つと、結ばれた癖のある黒髪。 首だけ振り返って背中越しに見えたのは、大好きな子たちで、 ぐわしっ、と掴んだのは手乗り地蔵。 碧の街の夕方に響いたのはカラスと、あほの4人の笑い声。 ******* 「はい、ごめんなさいは?」 とりま、双子と桜華ちゃんの3人を隣の病室―本来の桜華ちゃんの病室―のベッドの上に正座させること30分。 「ご、めんなさい・・・」 「騙されたのそっちじゃん」 「しゅぅっ・・・!」 ごちむ。 「ーーーっっっ」 「大丈夫、愛がこもってるから」 なんてにっこり笑顔なら任せて。伊達に社会人やってないわ。 こいつら、空き部屋と桜華ちゃんの部屋のナンバープレート入れ替えやがったのよほほほ・・・!! 「ごめんてなづっちゃー・・・」 秘技、桜華の上目遣い。やられてたまるかこんちくしょう。 「知らない。しばらく問診藤堂先生に代わってもーらぉ」 それぐらいしないとね、気がすまないし。 ・・・寂しいとか思っちゃったのも悔しいし、おんなじ思いすればいいんだわ。 そしたらまた内緒でおやつ持ってきて会いに来てあげれるんだから。 ふん。 |